Engineers　〜 技術者構成 〜

　私の業務経歴は、某鉄道会社の操車場のヤードコントロールシステムにおけるアプリケーション開発に始まります。 以降、燃料プラント・高速道路トンネルの監視システム、金融の情報提供システム、空港の立入証管理システム、航空機の航跡表示システム、メーカー殿向けのツール開発等々に携わり、 現在は携帯電話のソフトウェア開発を行っております。
　経験年数20年超ともなれば、いくつものプロジェクトを経験しているのは当然のことですが、 私は、経験した分野／計算機／OS／プログラミング言語の種類や数よりも、実務から得たものこそ重要であると考えます。 それらは具体的な開発技術に関することだけでなく、大半は「なぜ、そのようにあるべきか？」あるいは「なぜ、そのようにすべきでないか？」という思想的なものであり、 無形の財産ともいえるものです。
　シニアエンジニアの１人として、この財産を今後のシステム開発にも活用し、自身の引出しを更に増やすとともに、 後輩エンジニアに対してエッセンスを伝授していくことが使命であると考えております。

　私が参画したプロジェクトの中で、特に印象に残っているのは、この業界に入ってから１年後に２年間ほど携わった「X11 日本語入力システム開発」です。 本プロジェクトは、それまでEWSベンダー各社が独自に自社製ＥＷＳ上X-Window System V11(以後X11) 実装していた日本語入力システムについて、 各社協議の上、共通化された(変換エンジン、入力マネージャ、X11間)インターフェース仕様に基づき、富士通製日本語入力システム(OASYS)を実装するというものでした。
　プロジェクトも最終局面に入ったころ、日本語入力マネージャと変換エンジンの変換モード認識にずれが生じるという問題がもちあがりました。 詳細は失念いたしましたが、日本語入力マネージャ側が「変換モード」になっているのに、変換エンジン側が「無変換モード」になるというものだったと記憶しています。 本現象は、変換モード変更キー連打により発生し、またその原因はWindows Systemイベント伝播遅延によるものでした。 変換モード切替のスピードを改善するため、入力マネージャと変換エンジンがともに同じキーイベントを参照し、 （お互いに対話することなく)自身の変換モードを変更するように改修したことが結果的に仇となりました。
　我々はこの問題への早急な対処を求められ、最終的には私の考えたアイデアにより、この問題を解決することができました。 非常にトリッキーな方法であったので、実際に解決できたことを確認した時、非常にうれしかったことを憶えています。 残念ながら、具体的な解決方法については、忘れてしまいました。しかし、非同期処理には、何らかの遅延がつき物であることを痛感したことは、その後の私の財産となりました。
今でも、そのような遅延の問題に直面すると、当時のことが思い出されます。